磯子区食生活等改善推進員(ヘルスメイト)セミナーで講演を行いました
磯子区食生活等改善推進員会から依頼があり、6月20日、磯子区役所で講演を行いました。
この会は「食」を中心とした健康づくりを目的として活動し、今年で50周年という歴史あるボランティア団体です。約50名のヘルスメイトさんが熱心に話を聞いて下さいました。
今回、「歯の健康と健康長寿」という大きなテーマでお題をいただきましたが、50代以上の方が対象と聞き、欠損補綴を中心に次のような話をしました。
歯が無くなった時の治療方法には、義歯(入れ歯)、ブリッジ、インプラントがあります。それぞれの利点、欠点に触れ、当院の治療システム等を紹介しました。
当院では、すぐに手術するのではなく患者さんへの情報提供を大切にしています。必要な検査を行い、そのデータをもとに医療倫理に基づいた医療面接をします。1本のインプラントを埋入する時間は15分ですが、医療面接には1時間から3時間を費やします。
インプラントの使い方として、歯冠補綴、ブリッジ、少数のインプラントで入れ歯を安定し小型化させるオーバーデンチャーを説明し、当院で行った3つの症例を画像や動画を使って紹介しました。
講演の最後に受けた質問の中に、「インプラントができない患者さんはいるのですか?」という素晴らしい質問がありました。
顎の骨量が少ないとか、神経までの距離が短いなど解剖学的な問題があるケースはまれに見られますが、現在の歯科治療は骨造成などの方法があるので殆どのケースは対応できます。
ただ全身的な問題で注意しなければならない点が幾つかあります。
高齢化社会を迎え、患者さんの多くはいろいろな病気を抱えています。骨粗鬆症の患者さんも増えています。
60代の女性の約30%、70代の女性の約50%は骨粗鬆症の治療を受けています。また、悪性腫瘍の患者さんは、その治療を受けた後、ビスフォスフォネート製剤や抗RANKL抗体といった骨吸収抑制剤を投与されているケースがあります。
このような患者さんが抜歯や口腔外科の処置、インプラント治療を受ける場合や、合っていない入れ歯を長期間装着している場合は、前述の骨吸収抑制剤による薬剤関連顎骨壊死(MRONJ)がまれに起こることがあると報告されています。
したがって、骨粗鬆症や悪性腫瘍の治療を受けている患者さんにインプラント治療を行う際は、最大限の注意が必要です。
もちろん、その薬を投与されているから抜歯やインプラント治療が受けられないということではありません。休薬したり、適切な対応を行ったりすることで治療を行うことは可能ですので、骨粗鬆症や悪性腫瘍の治療で投薬を受けている方は、歯科医師に事前にそのことを伝えていただきたいと思います。
薬剤関連顎骨壊死を、昔はBRONJ(ブロンジュ)と呼んでいましたが、2014年にアメリカ口腔顎顔面外科学会が名称を変更しました。昔は対象となる薬剤がビスフォスフォネート製剤(Bisphosphonate)だったのですが、その後抗RANKL製剤も認可され、MRONJ(Medication-Related Osteonecrosis of the Jaw)と言われるようになったのです。
今回のセミナーに参加したヘルスメイトさんからは、
- 歯を失った時の治療の選択肢がこんなにあると思わなかった
- 他院のインプラントの説明では8㎜のインプラントしか入らないと言われた。人工骨の話を聞けて良かった
- インプラントについて恐さばかり先行していたが、動画の説明で良く理解できた
- インプラントにするつもりは無かったが、話の内容を聞いて、もしもの時はやってもいいかなと思った
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