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下顎前歯部のインプラント治療《インプラントオーバーデンチャー》

インプラントの役割は、歯を失った部分に新しい歯を作るだけではなく、少数のインプラントを埋入し、それを支持装置にして入れ歯を安定させることができます。この治療法を「インプラントオーバーデンチャー」と言います。

当院では、これまで25年以上インプラント治療を行ってきましたが、下顎のインプラントオーバーデンチャーは非常に成功率が高いと感じています。

写真は70代の女性です。下顎の義歯が安定しないという主訴で来院されました。

上顎にはブリッジが入っていましたが、下顎は自分の歯が1本しか残っておらず、そこに針金を掛けた形の取り外し式部分入れ歯が入っていました。

当院で行っている治療について事前に調べて来たということで、患者さんの方から、「下顎にインプラントを何本か入れて、入れ歯を安定させてくれませんか?」とインプラントオーバーデンチャーを希望されました。CTで精査したところ、下顎の前歯部に3本または4本のインプラントを入れられることがわかりました。

但し、いきなり残っている1本の歯を抜いてしまうと入れ歯の安定が悪くなるので、ぎりぎりまで残しておき、埋入したインプラントが骨に生着した後にインプラントオーバーデンチャーを作って、その歯を抜歯するという計画を立てました。

新しく作る入れ歯は、骨に固定されたインプラントで支えられていので安定が良く、着脱も簡単にできるので患者さんが清掃を楽にできます。

治療後、この患者さんはしっかり固定された入れ歯で、おいしくものが食べられるようになりました。

2002年にカナダのマギル大学が発表したコンセンサスにも、下顎前歯部におけるインプラントオーバーデンチャーの有効性が提唱されコンセンサスが得られています。下顎のオーバーデンチャーは、インプラントの生存率が非常に高く、外科的な合併症の発症率も非常に低いことなどが報告されています。

歯をすべて失った場合、時間の経過とともに下顎臼歯部の骨は吸収され、下顎管までの距離が短くなってしまいます。そのため下顎の臼歯部にオーバーデンチャーのためのインプラントの埋入はできません。それに対し、下顎前歯部は神経管へのリスクが少なく、骨も硬いのでインプラントの埋入が可能です。

下顎の前歯部におけるインプラントオーバーデンチャーが最も盛んに行われているのは、オランダです。その理由は、オランダでは下顎の前歯部のインプラントオーバーデンチャーが保険適用となっているからです。ただしオランダは、国が行う日本の保険制度とは違って民間の保険です。保険会社は、下顎の前歯部では成功率が治療法だとわかっているから保険適用になっているのだと思います。

術後 パノラマ写真

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