歯科医療におけるDX化の流れ
いま、社会のいろいろな所でDX(デジタルトランスフォーメーション)化が進んでいます。
歯科医療においては、診療の質を上げ治療時間の短縮や痛みを減らす治療が今後要求されてくると思います。
歯を作る際、従来はネバネバした印象材を口腔内に入れて型をとり、技工士さんが手作業で仮歯を作っていました。当院では2020年末に院内技工所を開設し、歯を作る流れが大きく変わっています。
例えば一度に8本インプラントを埋入したケースでも、院内技工所で全てデジタルで製作することが可能です。デジタルの場合、1回の削り出しでできる歯の本数に限りがあるのですが、いくつかのパーツに分けるという方法により、短時間で1度に作ることができるようになりました。
仮歯に使用するアバットメントもデジタル技術で製作。仮歯はPMMAという特殊なプラスチックを削り出して作ります。そして最終的には、ジルコニアを使った上部構造に取り替えます。これらの作業はすべて院内技工所内でデジタルで行っています。
歯をデジタルで作る具体的な方法は次のとおりです。正確なポジション、適正な深さに埋入したインプラントにスキャンボディーを立てて、口腔内スキャナーでデータを取り込みます。データを基に、インプラントに接続するアバットメントをデザインし、ブロックから削り出します。アバットメントの上にのせる仮歯は、CADソフトを使ってコンピューター上でデザインし、材料のPMMAを削り出して製作します。
この仮歯は特殊なプラスチック製なので、最適な嚙み合わせで制作でき、また患者さんのご要望に応じて微調整したりが可能です。
要望を取り入れた仮歯を再びスキャンし、そのデータを基に最終的な上部構造をミリングマシンで削り出します。
上部構造の材料はジルコニアで、最後に固く焼結して仕上げします。
このように、約2年前に比べると、当院の歯を作る工程は激変しました。まさしくDX化と言えると思います。
これにより、型取りが苦手な方にも負担が少なく、模型を作る手間が省けるので時間も短縮することができました。
ただし、手術の基本はアナログです。CTと口腔内スキャナーのデータを使い、歯牙支持型または粘膜支持型のガイドを製作し、フラップレスの手術をすることは可能です。ただ、全ての症例に適応ではありません。骨の形がいびつだったりすると、フラップレスで手術ははできません。
フラップレス手術に対し、否定的な先生もいらっしゃいますが、症例を選べば患者さんの利益になる優れた手術方法と言えると思います。私もガイドだけに頼ることには反対です。ガイドにイレギュラーなことが起きた場合、従来の方法で完全に手術できる技術が無ければリカバーできません。
ガイドの利点、欠点を充分理解し、患者さんの骨質や軟組織の形態を理解したうえで、手術方法を選定しなければなりません。
歯科治療はDX化が進んでいますが、人間の技術が伴ってこそ活きる技術であると思います。
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