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上顎骨が傾斜した形態の患者さんに対し、骨造成とインプラント埋入を行った症例

60代の女性です。

7~8年前に右上臼歯部に上顎洞底挙上手術を行い、インプラントを多数埋入した患者さんです。

今回は反対側の左上臼歯部の欠損に対しても同じく上顎洞底挙上手術が必要ということで、すぐに同意されました。

際立った全身疾患は無かったのですが、この方の場合は頬骨が出ており、上顎骨の形態が手術をするには難しい症例でした。

上顎骨の形態、上顎洞底部の形態、そして洞粘膜の厚みなど、いろいろな要素によって手術の難しさがかわってきます。

上顎骨が垂直的な場合は手術しやすいのですが、この症例のように傾斜している場合は、上顎に窓開けする際、ドリリングに非常に気を使います。

そして洞粘膜を剥離する時も、手術野が狭く、見えにくいのが難しい理由です。

結果的には、予定通り、2時間くらいで骨造成とインプラントの埋入を行うことができました。

患者さんの骨の状態には、いろいろな方がいらっしゃいます。これまで様々な症例を経験しているからこそ、無事に手術ができたのだと思います。

あらためて、歯科治療について考えてみます。歯に何か問題が出た時、それを治すのが歯科医の仕事です。歯を抜歯して失った時、どうやって治すかというのが一つのテーマですが、歯が無くなったら、何でもブリッジを入れればいい、部分入れ歯を入れればいい、あるいは、何でもかんでもインプラントを入れればいいというような、偏った考え方は絶対に良くないです。

ジルコニアのブリッジもあり、部分入れ歯をマグネットの着脱式デンチャーを入れる方法もあり、インプラントで欠損補綴をする方法もあります。治療には、幾通りも方法があります。歯科医はそれらの全てを、一通りできる必要があると思います。

治療の経験が少ないと、これが自分の治し方と決めつけてしまい、それは患者さんにとって、気の毒です。どの治療法が、その患者にとって最適な方法か、できるだけ多くの情報を提供し、治療のいろいろな選択肢を提示して、そのメリット、デメリットまでを説明し、その中から患者さんが選ぶべきだと思います。

私はこれだけ多くのインプラント治療を行ってきましたが、インプラント治療をしない、勧めないケースもあります。

たとえば、インプラントを入れた時に、両臨在歯との調和がとれるかどうかも重要です。インプラントを埋入できても、隣の歯の歯頚線とギャップがある場合や、笑った時に歯茎が見えるハイスマイルラインの場合は、ブリッジの方がきれいにできる場合があります。 治療法を選択する際は、その患者さんが、全身的な疾患を持っているかどうか、どのような薬を服用しているか、局所的な問題は無いか、さらには、その患者さんが定期的にメインテナンスに来院して下さるかまで、総合的に考えて判断するようにしています。

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